胆嚢破裂
- 2024/05/27
- 症例について
今回の症例は老犬のチワワが頻回の嘔吐を呈し、ぐったりして死にそうとのことで来院されました。血液検査やX線、エコー検査を実施したところ、胆嚢破裂を起こしてり、それに伴う腹膜炎、敗血症、黄疸を認めました。
一般的に、胆嚢破裂や強い炎症を起こした動物の全身状態は非常に悪く、輸液や抗生物質等を投与して安定させた後、速やかに胆嚢摘出術を行う必要があります。全身性の炎症反応から肺水腫や膵炎を併発することもあり、その治療も同時に行いますが、周術期の死亡率は20%程度と非常に高いです。本症例も胆嚢が破裂して胆汁が腹腔内へ漏出しており、重度の腹膜炎を認めました。手術は胆嚢切除と腹腔内洗浄、ドレーンを留置して終えています。周術期管理が非常に重要な症例になりますので慎重に管理していかなければなりません。
そもそも犬の胆嚢破裂の原因には、胆石による肝外胆管閉塞、胆嚢粘液嚢腫、 慢性細菌性胆嚢炎などがあります。胆嚢粘液嚢腫は、胆嚢内に粘性の高いムチンが溜まり、胆汁の滞留を引き起こす病気です。胆嚢の収縮機能の低下や胆汁の流れの減少が関係していると考えられています。胆嚢粘液嚢腫と診断された犬の10%がいずれは胆嚢破裂を起こすといわれています。定期的な血液検査や画像検査を実施し、肝臓の数値や胆嚢の形状を観察することが予防につながるかと思います。