心原性肺水腫
- 2021/10/18
- 症例について
寒い時期になってまいりました。この時期に多くなってくる病気の一つがワンちゃんの心臓病です。
こちらの症例は呼吸が苦しい、咳をし、息が荒く歩けないとの主訴で来院しました。X線を撮影しますと心臓が肥大し、写真の赤丸部分の肺が白く肺水腫を起こしていることがわかりました。
心機能を評価するためエコー検査を実施しますと、模式図の赤丸で囲った部位、僧帽弁(血液の逆流を防止するための装置)に逆流が生じ、閉鎖不全を起こしていることがわかりました。これにより通常大動脈に流れないといけない左心室の血液が左心房へ逆流しており、その結果、左心房が拡大し、肺から戻る肺静脈の血液が左心房へ戻ることができない状況に陥っており、僧帽弁閉鎖不全症に起因する心原性肺水腫と診断されました。
このワンちゃんは肺に水が溜まっているため、呼吸困難に陥っている状況でした。治療はワンちゃんを酸素室に入れ呼吸がしやすい状況を作り、利尿剤や強心剤等を用い治療しました。
幸いにも2-3日で症状が劇的に改善し、赤丸部分の肺野も綺麗になり、肺水腫が改善しました。症状も落ち着き食事もできるようになり飼い主様も喜ばれていました。
しかしながら、今後は肺水腫を起こさないために僧帽弁閉鎖不全症つまりは心臓病の治療のために生涯内服の投薬が必要となります。