- 2022/04/29
- 症例について
今回の症例は猫の膿胸です。猫同士の喧嘩による咬傷、食道や気管支の穿孔、肺炎の悪化など何かしらの原因で胸腔内へばい菌、細菌が侵入してしまい、胸の中で膿を作ってしまう致命的な病気です。地域がら猫ちゃん同士が外で喧嘩をするのをよく見かけると思います。爪や咬み傷からのばい菌が胸壁の筋肉を超えて胸の中に入り、胸に化膿病巣を作るのでしょうか、当院でもよく遭遇する病気のひとつです。病気が進行すると胸腔内に貯留した膿により呼吸困難、また全身に細菌が回るため、敗血症で亡くなってしまいます。
今回の症例猫ちゃんは他院にて内科的に膿胸治療を行なっていましたが、改善の見込みがなく当院へ来院されました。
来院時は呼吸状態も悪く、レントゲンでも心臓の陰影が見えないほど胸腔内に膿が貯留しています。今まで同様に細いカテーテルで外側から洗浄していてもなかなか膿の芽まで完全に吸引除去できません。このことから膿胸の治療は再発率が高く、なかなか根治できない病気のひとつとして認識されています。当院での治療計画としては、開胸手術にて一度胸を開き、生理食塩水で何度も洗った後、太めのトロッカーカテーテルを留置して、朝晩の洗浄を行っていくこととしました。
右側に多く膿が貯留していたため、右側第5肋間開胸にてアプローチ。
膿と化膿片が大量に認められ、全てをピンセットにて取り除いていきます。
このように生理食塩水で何度も洗浄していきます。
術後のX線ではこのように心臓の陰影が綺麗に見えます。
ここから1-2週間朝晩カテーテルから洗浄していき、化膿細菌に対して薬剤感受性がある抗生物質を投与していきます。回収液が綺麗になった時点でカテーテルを抜去し、治療終了となります。
当院でも再発症例を経験しますが、積極的に外科的に開胸洗浄した方が完治率が高いように思われます。